農業が生んだ社会問題 ~サピエンス全史② 農業革命~

2024
Polaris books
Polaris books

こんにちは、Polaris booksです!今回は前回に続き、「サピエンス全史」を紹介します。

私たちが生きる現代社会の多くの問題は、実は1万2千年前に始まった「農業革命」にその根を持っています。狩猟採集生活から農耕生活へとシフトしたホモ・サピエンスは、一見すると安定した食料供給を手に入れ、文明を築くための基盤を作り上げました。しかし、『サピエンス全史』の著者、ユヴァル・ノア・ハラリは、この「革命」を「人類最大の詐欺」とまで呼びます。なぜなら、農業がもたらしたのは飢えや貧困、不平等、そして戦争といった多くの新たな問題だったからです。本記事では、この農業革命がどのように私たちの社会や思考に影響を与え、未来に対する不安やヒエラルキーといった問題の起源となったのかを探ります。

さらに、これらの問題をどのように理解し、解決に向けて行動することで、明るい未来を築けるかについても考察します。

この記事で分かること

・農業革命とは?

・農業革命によって生まれた悪循環について

↓前回の記事はこちら↓

農業革命とは?

『サピエンス全史』で描かれる「農業革命」は、ホモ・サピエンスの歴史における重大な転換点として、私たちの生活、社会、そして思考のあり方に深く影響を及ぼした出来事です。この革命が始まるまでの人類は、狩猟採集民として自然と調和しながら生きてきました。彼らは主に野生動物を狩り、植物を採集しながら、その日暮らしの生活を送っていたのです。しかし、約1万2千年前に農業を始めたことが、ホモ・サピエンスの運命を大きく変えることとなりました。

農業革命は、種子を植え、作物を育て、動物を家畜化するという新しい生活様式の確立を指します。特定の土地に定住し、穀物や野菜、家畜を管理し、食料を効率的に生産することで、サピエンスは安定した食料供給を得るようになりました。この「革命」は一見、人類にとって非常に有益な進歩のように思われます。飢えの心配を減らし、余剰食料を生み出すことで、より複雑な社会構造や文明を築く土台を作ったからです。

しかし、ハラリはこの農業革命を「人類最大の詐欺」とも呼んでいます。なぜなら、農業が人々の生活を豊かにしたわけではなく、むしろ多くの制約を生み出したからです。それまでの狩猟採集生活と比べ、農業は人々に終わりのない労働を強いるようになりました。畑を耕し、作物を収穫し、家畜を管理するために、サピエンスは日々の膨大な労働を強いられ、身体的にも精神的にも苦しむようになったのです。また、農業に依存することで、食料供給の不安定さや、人口過剰、貧困、不平等、戦争といった新たな問題が次々と発生しました。

さらに興味深いのは、農業革命がサピエンスの精神的なあり方にまで影響を与えた点です。狩猟採集民は多様な食料を求めて移動し、自然と共に生きる生活を送っていましたが、農耕民は土地に定住し、そこに根を下ろすことで、自分たちの土地や財産に対する強い執着心を抱くようになりました。これがやがて、所有や階級、国家、宗教といった複雑な社会制度の形成に繋がります。つまり、農業革命は単なる技術的進歩ではなく、人類の思考や価値観、社会のあり方を根本から変えた出来事だったのです。

本書では、この農業革命がなぜ「革命」だったのか、そしてその影響がどれほど深刻で広範囲にわたっていたのかが、深く掘り下げられています。ハラリは、私たちが当然のように受け入れている「文明の進歩」という概念を問い直し、その裏に潜む多くの犠牲や矛盾を浮き彫りにしています。そして、この農業革命をきっかけに、人類がいかにして地球上で圧倒的な存在となり、環境や他の生物、さらには自分自身にどのような影響を与えてきたのかを考察しています。

僕が学んだこと・考えたこと 

なぜ不安を感じるのか 

人間なら誰でも一度は未来に対し、不安を感じたことがあると思います。本書の中で、ホモサピエンスが未来に対する不安を感じるようになったのは農業革命がきっかけだと述べられています。狩猟採集民として生活していたころのホモサピエンスは目の前のこと、つまり今日を生きるか死ぬかでいっぱいであったため、数か月後や数年後について考えることはありませんでした。しかし農業革命が起こったので、未来について考えることは重要になりました。農業経済は、何か月にも及ぶ耕作に短期の収穫繁忙期が続くという、季節に沿った生産周期に基づいているからです。雨は十分に降るのか?嵐で苗が倒されたりしないか?など、農業の成功に不可欠な自然現象についての不安が起こり始めたのです。そして、そのような不安を感じるのは、それに対して、開墾して新たな畑を作ったり、灌漑水路を掘ったり、追加で作物を育てたりするなどして自分たちで対策を講じることができたからだといいます。

僕はこのことから「不安を感じることは悪いことではなく、それは自分を成長させるきっかけになる」と考えました。不安は未来の出来事のうち、自分が手を打てることに対して感じます。現時点で不安だなと思うのならば、その不安を少しでも減らせることを考え、実行すればいいのです。そして、その行動は自信に変わります

僕は、大学1年の前期、テストがとても不安でした。大学に入って初めてのテストだったということもありますし、かなりボリュームが多い教科が複数ありました。落単だけは絶対に避けようと勉強を必死で頑張りました。テスト1週間前はほとんどの時間をテスト勉強に費やしていました。そんな風にがむしゃらにやった成果なのかテスト本番ではなぜか、大丈夫だという自信がありました。もちろん不安が完全に消えていたわけではありませんが、それ以上にこれまでの自分がやってきたことに自信を持っていました。

不安がなくなることはありません。しかし、自分の行動で結果はいくらでも良くなります。その行動は間違いなく自分を成長させ、良い結果へ繋がるのだと僕は考えました。

ヒエラルキーについて 

歴史の中で、常に問題となってきたものの一つにヒエラルキーがあります。ヒエラルキーは、一般的に組織やシステムの中で要素や人々が上下関係に基づいて構成される秩序や構造を指します。ハラリ氏は本書で、このヒエラルキーはホモサピエンスが創り出した虚構であり、秩序を保つために作られたものだと述べています。ヒエラルキーや差別があれば、知らない人同士でもお互いをどう扱えばいいのかが分かるからです。

虚構については以下の記事で詳しく解説しています。

僕は、ヒエラルキーがなぜ生まれたのかを学ぶことは歴史を学ぶ意義だと考えました。

ヒエラルキーや差別は、支配階級が自分たちの特権を守るために生まれたものです。そして歴史の中で優遇された人たち(特権階級)は次の時代も優遇され、犠牲になった人たちは次も犠牲になるという悪循環が生まれます。本来、ホモサピエンスの間には、生物学的な差はほとんどないといわれています。しかし、社会的には大きな格差が生まれています。この生物学では説明できない部分を考えるうえで必要なのが歴史です。犠牲の悪循環を止めるために、なぜこのヒエラルキー・差別が生まれたのかを学ぶことが大切だと考えました。

ヒエラルキーによる悪循環の例に、アメリカの黒人差別があります。偶然の出来事で生まれた差別が社会的習慣となり、白人と黒人との間で教育や経済力の格差が生まれました。それにより、黒人の方が、ホワイトカラーの職に就きにくかったり、経済的な理由から犯罪が増え、犯罪率が高くなるという状況になっていきます。人々はこの結果を見て、「やはり、黒人は白人より劣っている。」と考えるようになり、またこの結果は支配階級が創り出した虚構が正しいという証明になってしまいます。しかし、この結果自体がヒエラルキーによって生まれた結果なんです。この悪循環を止めるには、なぜこのような結果になっているのか、その原因を考えることが必要です。

ヒエラルキーは依然として社会の大きな課題の一つです。犠牲になる人を減らすために、悪循環を断ち切らなくてはなりません。そのために歴史からなぜこのヒエラルキーが生まれたのかを学ぶことが重要だと考えました。

まとめ 

今回は『サピエンス全史』の「農業革命」についてと僕が考えたこと・学んだことについて解説しました。農業は人類の生活をすべての面で良くしたと考えていましたが、実はそうではなく、現在にも残る大きな問題が生まれた原因でもあるということに気づきました。歴史で繰り返されてきた悪循環について、自分たちはどう向き合うべきかを問われているようにも感じました。

次回は、「統一」の部分について解説します!お楽しみに!

コメント

タイトルとURLをコピーしました